イタリアのかかとってどんなところ?

イタリアのかかとってどんなところ?

"Cartoline dal Salento" = サレントからの絵はがき

南イタリアのサレント。
その土地や、そこで人生を謳歌する人々の姿をイキイキと感じられる絵はがきの
ようにお届けしたい、そんなイメージでスローライフなブログを綴っています。
サレント郷土料理のレシピやイタリア語のワンポイントレッスンも登場します。
どうぞごゆっくり、楽しんでいってくださいな^^

2010/04/12

サレントの伝統行事「Le tavole di San Giuseppe」

Ciao a tutti! みなさんこんにちはー☆


桜前線北上中ですが、みなさんの街の桜の花はいかがですかー?お花見を楽しみましたか? こちら大阪でも先々週さらに先週末とお花見であちらこちらの公園がにぎわっていました!♪!♪!♪!もうだいぶ散り始めてますけど…
今年は「花冷え」のおかげで桜の花をずいぶん長いこと楽しむことができましたねー^^
FracciaMacciaの家の近所を流れる大川(旧淀川)沿いに数百メートル連なる桜並木の下をジョギングしただけでも、一日とっても幸せな気分で過ごせます♪
桜餅があったら幸せ度がさらにアップ♪「花も団子も」のFracciaMacciaです^^


さーてさて!今日お話したいテーマはイタリアで行われる春の伝統行事 "San Giuseppe (サン・ジュセッペ = 聖ヨセフ)" のお祭りです☆
サン・ジュセッペの日は3月19日だったんですが、今日イタリアに住むFracciaの両親からその時の写真が入った小包が届いたので、遅ればせながらご紹介したいと思いまーす♪


イタリアは言わずとしれた伝統的にカトリックのお国柄ですが、サン・ジュセッペさん(聖ヨセフ)はイエス・キリストの育ての父親(イエスのお母さんであるマリアの旦那さんですね)ということで、イタリアをはじめとするカトリックの国々(スペイン、ポルトガルなど)では、この3月19日は "La festa del Papa`(ラ・フェスタ・デル・パパー = 父の日)" になっているんですよ。この日には、子供たちや家族がお父さんに小さいプレゼントを贈ったり、またお父さんのための詩を作って読んだりなどもします、これはFracciaの家だけかな?^^


3月19日=サン・ジュセッペの日だけでなく、これらカトリックの国々では、1年365日毎日にそれぞれの聖人が決められていて(イタリアのたいていのカレンダーにはその日の聖人の名前が毎日びっちりと書きこまれています。日本にも二十四節気とか六曜なんてありますが、数が圧倒的に多いんです)、それぞれの日にちなんだお祭りもたくさんありますが、たとえば…2月14日の San Valentino(サン・ヴァレンティーノ = バレンタインデー)は世界中で有名ですよね♪


イタリア人はみんなそれぞれ自分と同じ名前の守護聖人の日を持っていて "Onomastico" (オノマスティコ = 聖名祝日) と呼び、イタリアでは「もうひとつの誕生日」みたいに考えられています。今では宗教的な意味は薄れてほとんど無くなっていますが、それでもまわりから「おめでとう!」って言われたりちょっと幸せな気分で過ごせる日が一日増えて、得した気分になれるんですよ♪
たとえばFracciaの場合は、オノマスティコがSan Francesco(サン・フランチェスコ = 聖フランチェスコ)の名前のついている10月4日です。本当の誕生日は3月だけど、毎年この日にもBuon onomastico!」(ブォン・オノマスティコ = 名前の日おめでとう!) と言ってもらえるわけです♪



サン・ジュセッペの日が父の日と結びつけられるようになったのは20世紀初頭からです。ちょうどその頃アメリカで始まった新しい習慣「母の日」や「父の日」の影響があったのでしょうね。発祥の国アメリカや、現在の日本では、父の日は6月の第3日曜日ですが、「お父さん=サン・ジュセッペ」というイメージが強いカトリックの国では3月19日を父の日とする方が自然だったんだと思います。
ちなみに、イタリアでも「母の日」はアメリカや日本と同じく5月の第二週の日曜日なんですけどね。ちょっと不思議^^




サレントなど南イタリアでは、3月19日に行われる行事として、「父の日」よりずっとずーっと古い伝統が残っているので、その伝統をご紹介したいと思います。


ちょっと写真をみるとグロテスクな人形が登場したりちょっとおどろおどろしい感じがして、日本人(というか恐がりなMaccia)の目から一見すると「……???」な行事なので心臓の弱い方はご注意を!?(笑)
でもせっかくですから珍しいと思うので写真を見ながらみていきましょー♪



この行事の起源は2000年以上昔の古代ローマ時代にまでさかのぼります。暦上冬の終わりである2月20・21日のEquinozio di primavera(エクイノツィオ・ディ・ピリマヴェーラ = 春分点)の時には、ローマ時代以前から春を歓迎するお祭りがありました。この日は一年で昼と夜の長さがほぼ同じ、この日を境に昼の時間がどんどん長くなるわけですね。


その古い行事が、のちにキリスト教やサン・ジュセッペさんのエピソードの影響を受けて融合し、ローマ時代から伝わる伝統料理を作ったりしつつも、現在ではいちおうキリスト教に由来する伝統のひとつに数えられるようになっています。
聖書などキリスト教で伝えられているサン・ジュセッペさんのイメージは、やさしいお父さんというだけでなく、寛容な精神の象徴といった人物です(そりゃそうですよねぇ、婚約者がある日いきなり自分の子じゃない赤ん坊を産んで → それにめげずに妻子の逃亡生活を助け → 揚げ句にはその後その子が大きくなるまで立派に育てたんですから! ^^)。


彼のこのイメージからサレントの行事は生まれました。寛大だったサン・ジュセッペさんをみならい、毎年3月19日のお昼ごはんにはゲストを家に招待してランチを一緒に食べるんです。この日に用意する食卓あるいはこの行事自体のことを Le tavole di San Giuseppe(レ・タヴォレ・ディ・サン・ジュセッペ = 聖ヨセフの食卓)と呼びます。


しかしこれだけだとサレントで見られるいつものイタリアの週末の光景と変わらないのでは?…いえいえいえいえゲストが普段とはちょっと違うんです^^
この日招待するランチのゲストには2つのタイプがありまして…
① ひとつは貧しい人 (!…だったら招かれた日には複雑な気持ちかも?・苦笑)
② もうひとつは…喧嘩をしてしまったけど、仲直りしたい友人や知人(!?)
どうですか? おもしろいでしょう?


ゲストとしてレ・タヴォレ・ディ・サン・ジュセッペに招かれたら、サン・ジュセッペさんに失礼になるので決して断れませんから、仲直りは成功すること100%間違いなしです^^


招待される各ゲストはサン・ジュセッペやイエス・キリストそれからお母さんのマリアなどをはじめとする、聖人の役を務めるんですよ♪
写真左: これだけの人数のゲスト、貧しい人たちをたくさん招く準備も前日には完了です。
よくみると真ん中にはタンバリンが☆ 宴会も盛り上がりそうですね♪
もちろん、このイベントで一緒に食事をする人たちのうちで一番偉いのはサン・ジュセッペ役の人ということになります。サン・ジュセッペ役の席には、"サン・ジュセッペの棒" なる道具まで用意されるんですよ♪ 
写真右: 仙人が持っていそうな立派な棒ですねぇー
サン・ジュセッペ役のゲストがこの棒で床をたたいたら食事がスタートです!


まぁ、純粋においしい料理を楽しむというよりは、むしろロールプレイングなど非日常的なイベントを楽しむという性質が強いせいか、この日のために用意される料理は普段とあまり変わらず、手作りのパンやパスタと魚(お肉ではなく)それから野菜料理など、比較的質素な感じです。前日から用意して並べておきます。それから珍しいメニューとしては Zeppole(ゼッポレ)という伝統的なデザートがあったりします。


Maccia: 聖人役のゲストとして誘われなかったらレ・タヴォレ・ディ・サン・ジュセッペを見れないっていうこと?
Fraccia: いえいえご心配なく♪ サン・ジュセッペの前夜だったら誰でも入れるのよ。だからこの写真も実家のパパとママが、前日公開しているよそのお宅に見学に行った時に撮った写真を送ってくれたの。
Maccia: あそっかー!あ、でも用意されたお料理を眺めるだけじゃ、お腹が空いちゃって大変なんじゃない?!
Fraccia: いえいえ心配しないで^^ 前夜に訪問する人達のためにも小さい料理が用意されるのよ。
Maccia: そっかー飛び込みで訪れる見学客にまで至れり尽くせりだね!それなら安心安心^^


(写真をよーく見ると、以前レシピをご紹介した"ピットゥレ"もありますね。 わかりますか?)


ところで今年のサン・ジュセッペの日当日のランチですが、イタリアに住むFracciaの家族たちは誰にも招待されることなく、また誰もゲストを家に招待することもなかったそうです。
というより、今まで一度も自分の家で開いたことがありません。だってお金持ちでも貧乏でもないし、よその人とケンカもしないから参加する機会がないし…ですけど…ある意味その方が幸せですよねぇ?^^




貧しい人を食事に招待したり、ケンカした相手を許したり、寛い心を持って他人を幸せにするほどの幸せはないなぁって考えさせられます。聖人君主とはいかなくても僕たちだって不景気だったり格差社会なんていわれる時代にこそ、こういう気持ちを大切にしたいですね。


というわけで、今回はとっても風変わりだけど心温まる南イタリア・サレントの伝統行事でした☆ チャンチャンッ♪




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★ 次回予告 ★
次回は、このサン・ジュセッペの日の食卓に欠かせない Zeppole (ゼッポレ) という伝統のお菓子、Fracciaのおばさんのレシピを紹介しようかなと思っています。お楽しみにー☆